「きずなメール やさしい日本語版」が完成しました!
「きずなメール やさしい日本語版」が完成しました!
クラウドファウンディングにご協力いただきました皆様に改めて御礼申し上げます。
2022年2月23日に「きずなメールやさしい日本語版」の完成報告会を行い、代表の黒田が参加いたしました。
「きずなメール」とは、NPO法人きずなメール・プロジェクトさんが妊産婦さん向けに、妊娠・出産、子育ての情報提供をしている取り組みです。
■内藤 みゆきさん 日本語教師
■由利 智美さん 日本語教師/ブランディング・コンサルタント
チームでのやさしい日本語の書き換えで工夫したこと
やさしいコミュニケーション協会でやさしい日本語の書き換えを承るときは、原文の内容、対象者、媒体などによってどのくらいの難易度で書き換えるのかを都度検討しています。
目指しているレベルを日本語能力試験に置き換えるとN4レベルを中心になるよう、N3以上のレベルの語彙や文法は可能な限り避けるということは意識しています。
成果物が紙なのかウェブサイトなのか、メールなのかなど媒体によって留意すべき点は変わってきます。
今回はチームでやさしい日本語の書き換えを行なったので、その際気をつけていたことや使っていたものをいくつかご紹介します。
- Googleスプレッドシートで作業を行う
- 作業シートにコメントできるところ、作業確認の項目を入れる
- Googleスプレッドシート以外にDiscord(Slackのようなもの)でやりとり
- 会議を開き、課題の共有や話したいことを口頭で話し合う
- 課題が出たときに運用ルールの変更を柔軟に行う(都度意見を聞く)
- 語彙シートを作成・共有し、書き換えの表現を均一にできないか模索
- 漢字表記が課題になったので、ばらつきを見つけ次第確認・共有
やさしい日本語の書き換えで難しかったこと、判断に迷ったこと
534通のやさしい日本語の書き換えは、決して平坦な道のりではなく、時に4人で唸りながらやさしい日本語への書き換えを行いました。
特に難しかったことは、
どこまでわかりやすく説明するのかと文章の長さ
今回、妊産婦さんへの情報提供ということで医療に関わる情報がとても多かったです。
医療のやさしい日本語に携わっている中でも感じることですが、非常に匙加減が難しいです。
医療者としては、必要な情報を正確に伝えてもらわないと困るけど、日本語教師としては情報が多く理解できないのではという懸念が出たりするわけです。
原文で伝えたいことは何か、どうわかりやすく伝えるか、どんな言葉を選べばきずなメールさんが作りたいゆるいつながりが感じられるような”寄り添い”を感じてもらえるだろうかと4人で唸りながら考えました。
それぞれが原文を読み込んで、こうも言えるのではないか、こういう言い方もあるなどたくさんの議論を行って書き換えてきました。
主となって書き換えを担当してくれた3人には感謝しかありません。
それと同時に、やさしい日本語にすると必ず”長く”なります。
きずなメールは漢字の上にルビを入れることができない仕様になっていますから、”長さ”がネックだなと書き換え始めた当初より文の長さが課題になりました。
本文の中に難易度の高い言葉を残し、<今日のことば>という項目を作り、そこで説明することにしました。
漢字の表記とルビの入れ方について
ルビに関しては、実はルールがないんです。(あったら教えてください)
下に書いたものはルビのバリエーションで、どれにするのかはルビを入れる人あるいはやさしい日本語に書き換える人のスタンスによります。
男の子
男の子(おとこのこ)
男(おとこ)の子(こ)
1人
1人
1人(ひとり)
1人(にん)
できれば、漢字の上にルビが入れられるという環境や媒体が私はベストだと思います。
そうではない場合は、漢字を減らす(ルビを入れる機会を減らす)かルビの入れ方をどうするのか検討し統一する必要があるでしょう。
今回、ルビについてはボランティアの皆さんが手伝ってくださり、文字の隣に入力していただきました。
その作業の中でいくつか迷われることもあったようでしたので、指示をさせていただきました。
その中の一つが助数詞の読み方のルビについてだったのですが、助数詞がある場合は、チームで話し合い「読み方に合わせてルビを入れてもらう」という結論になりました。
チームの中でも意見が割れやすかったのは、漢字表記をどうするのかというところで、表記としてどこまで漢字を残すのかということを決めていくのはすごく難しかったです。
当初はN3レベル以上の漢字はひらがなで表記しようという話をしていたのですが、そうすると「ひらがなだらけになってしまう・・・」という別の課題が出てきました。
また、熟語など漢字を2つ以上組み合わせた言葉は、片方がひらがな片方が漢字というような状態になってしまうものもたくさん出てきました。
辞書で調べるときに調べにくくなるのではないか、同音異義語がある場合に調べにくくならないかなどの懸念が出ました。
漢字ではなくひらがなだけだとある程度日本語がわかる学習者や漢字圏の学習者にとっては、言葉の境界線が曖昧になりかえってわかりにくいという意見もあるので、とても迷いました。
最後まで迷い、混在する形になってしまったのですが、これは反省点として今後の書き換えの参考にしたいと思っています。
「きずなメール やさしい日本語版」を外国人の妊産婦さんに読んでいただきたい
原文の編集、やさしい日本語への書き換え(翻訳)、医療監修を経て、
「きずなメール やさしい日本語版」は完成しました。
冒頭にも書きましたが、「きずなメール やさしい日本語版」は無料で読むことができます。
ですから、たくさんの人に知っていただき、外国人の妊産婦さんやご友人にご紹介いただけたらとても嬉しいです!
きずなメールは日本人向けにもありますが、これは皆さんがお住まいの自治体が契約している場合に読むことができます。
みなさんは、出生届を出すときに必要な書類が地域によって差があったり、赤ちゃんの健診の時期などに地域差があるなど、住んでいる場所によって違いがあることをご存知でしょうか?
地域の実情に合わせた情報提供についても、きずなメールさんと契約を結ぶことで、配信することができるそうです。
よりカスタマイズされた情報、地域の妊産婦さんに必要な情報をダイレクトに届けることができるようになります。
今回のようなコロナ禍で、妊産婦さんにどうしても知ってほしい情報があったときに個別に手紙を送ったり、電話をかけたりすることもできますが、きずなメールとつながっていれば必要な情報を必要なときに届けられるようになるかもしれません。
私の地域ではまだ読めない!という方はぜひ、自治体の方にきずなメールの存在と読みたいというご要望をお伝えいただければと思います。