やさしい日本語 × アート 言葉だけに頼らない「相互理解」
はじめに
「多文化共生マネジメント学会」に参加した際、株式会社Vireson(ヴィレゾン)代表取締役の土屋弘貴さんと出会いました。その後、9月にオンラインで改めてお話しする機会をいただき、共感することがとても多い時間になりました。
やさしいコミュニケーション協会の研修は、実は「外国人のための日本語研修」ではありません。受講するのは、日本語を母語とする人たちです。外国の方に日本語を上手になってもらうのではなく、伝える側の日本人が、伝え方を変える。そのための研修です。
土屋さんのお話を聞いて、「言葉以外の方法で、同じことを目指している方がいる」と、とても嬉しくなりました。今日は、Viresonさんの取り組みをご紹介します。
POCOPLE(ポコプル)とは
POCOPLEは、誰でもかんたんに絵・音楽・物語を作れるアプリです。
絵を描くツールでは、色や線の太さを選んで自由に描けます。アイデアが浮かばないときに手助けしてくれる「ひらめきアシスト」という機能もあります。
音楽は15秒までの短い曲を作ります。短くしているのは、初めての人でも迷わずに作れるように、あえて機能をしぼっているからだそうです。
私がいいなと思ったのは、AIは完成品をつくらずサポート役に徹し、人が想いを込めて自分の手で作ることを大切にしている点です。

多文化の職場での研修
土屋さんは、このPOCOPLEを使って、多文化の職場向けにも研修をされています。
研修では、参加者が一つのテーマに沿って絵や音楽を作り、それを発表し合います。作品には、その人の気持ちや大切にしている価値観が自然と表れます。多文化の職場での研修では、わかりやすい日本語で伝えることも、受講者に意識してもらっているそうです。
ある会社では、農業の新しい事業を始めるにあたって、社員の方が、スペースシャトルの上で農作物を作る作品を作り、既成概念を壊す挑戦をしたいという想いが生まれたそうです。
セブン-イレブン店舗などでの研修では、絵や音楽を通して、日本人スタッフと外国人スタッフが互いを知り、チームワークがよくなっていく。そんな効果が出ているそうです。研修の満足度は95%と、受講者に喜んでいただけているとのことです。
私が触ってみて感じたこと
実際にPOCOPLEを触らせていただきました。画面は難しくなく、押せるボタンも限られていて、とてもシンプルです。外国人でも子どもでも使いやすいツールだと感じました。
私は比較的「作りたい」「描きたい」という気持ちを持ちやすいタイプなので、作業にはあまり困りませんでした。
でも、「何を描けばいいかわからない」という人も、きっといると思います。そうした人に向けて、「ひらめきアシスト」でAIがアイデアを出してくれるのは、とてもいい試みです。
自分がイメージしていたものはもちろん、うまくイメージできていなかったけれど「そうそう、それ!」と言い当ててくれるようなものを見せてもらえると、作りたい気持ちがかき立てられます。頭の中にあるものを、AIが形にする手伝いをしてくれる。そこがとても素晴らしいと思いました。
言葉にできない思いは、表に出しにくいものです。人とすり合わせたり、共有したりするのも難しい。私自身、普段からそう感じています。そこをイメージとして見える形にしてくれることで、その人の内面を垣間見たり、考えていることの一部を感じ取れたりします。そうして、相互理解が深まっていくはずです。
大切なのは、上手な作品を作ることではありません。自分を表現してみること、そして「自分はこう感じているんだ」と気づくこと。それが目的だと聞いて、とても納得しました。
声の分析で見えた「本当の自分」
Viresonさんには、もう一つ面白い取り組みがあります。声の色による分析です。
九州産業大学をはじめ、複数の大学や企業で色彩学の講師・指導を務める桑野優子先生が、色彩の知見と声の周波数分析を組み合わせて展開しているのが「CNP」です。これは、声の周波数を色で見えるようにし、自分の特性や感情・思考の傾向を知り、相互理解を深めるためのツールです。Viresonさんは桑野先生と共同で、POCOPLE利用後の変化をCNPで可視化するプログラムを提供されています。
9月に体験会に参加しました。いちばん面白かったのは、声には、普段の習慣やクセ(顕在意識)だけでなく、自分でも気づいていない部分(潜在意識)まで、情報として入っているということでした。
自分の声を色で見せてもらい、桑野先生からフィードバックをいただきました。すると、「そうだな」と本当に腑に落ちるところがたくさんありました。
以前、印象分析を受けたときには「ゴージャス」と診断されました。確かに、私は少し派手な顔立ちです。そのため、見た目からは「イケイケで目立ちたいタイプ」と受け止められがちなのかもしれません。
でも、声の分析で見えた私の潜在意識には、そういう欲はまったくありませんでした。むしろ控えめで、受け入れることを大切にするタイプだと教えていただきました。
思えば、昔から部長や学級委員長になることが多い人生でした。でも、自分としては「立候補してもいいけれど、別にやりたいわけじゃない」という気持ちだったんです。「なんか知らんけど、任されやすいのは外見の印象もあったのかもな」と、腑に落ちました。
普段あまり人に見せていない部分や、自分からはあえて話さない内面。それを見透かされたような、でもやさしく見える形にしてもらえたような体験でした。
声の分析は、日本語が母語でない人が、日本語以外の言語で話しても分析できるそうです。また、声がうまく出せない人でも分析できるそうです。多文化の職場でも活かせる技術だと感じています。

やさしい日本語と、言葉以外で伝える力
今回の出会いを通して、改めて思ったことがあります。
やさしい日本語は、言葉のハードルを下げて、相手に届けるための工夫です。一方、POCOPLEや声の分析は、言葉に頼らずに、その人の気持ちや本当の姿を見えるようにする方法です。
この2つは、どちらか一つではなく、一緒にあるとより力を発揮すると感じました。言葉のハードルが下がると、日本人も外国人も、同じ立場で参加できます。
たとえば、こんな場面で活かせそうです。
- 外国にルーツを持つ子どもたちがいる学級で:クラスの一体感を高めるためのワークショップに
- 介護の現場で:一緒に働く外国人スタッフと日本人スタッフのチームビルディングに
「どんなふうに働きたいか」
「利用者の方にどう過ごしてもらいたいか」
そんなテーマで表現してみると、言葉になっていない心の中が見えてきます。「普段こんなことを考えながら仕事をしているんだ」と気づいたり、思いがけない一面に驚いたり。お互いをより深く理解するきっかけになると思います。
ほかにも、言葉での表現が難しい方がいる障害者施設や高齢者施設、国籍に関係なくチームで同じ方向を向きたい会社など、活かせる場面はたくさんありそうです。
やさしい日本語研修と組み合わせたい方へ
「多文化の職場で、やさしい日本語と一緒にPOCOPLEも取り入れてみたい」など、どうぞお気軽にご相談ください。Viresonさんと一緒に、内容を考えます。
POCOPLE・声の分析を体験してみたい方へ
Viresonさんでは、毎週、オンラインで無料の体験会を開いています。

